『忘れ人の物語』
二人が出逢ったとき、二人は認知症でした。
二人は桜が咲いたとき、悲しそうでした。
二人は蝉が哭いたとき、笑い始めました。
二人はトンボが飛んだとき、語り合いました。
二人はお正月がきたとき、いたわりあいました。
そして春がくる前に、二人は一人になりました。
忘れ人が忘れ得ぬ人を
"どこにいったの?" と訊ねます。
そう訊かれる度に私は問われるのです。
そして私は
自分が生きてきた "とき" に問いかけます。
その答えは自らが生きてきた
"とき" に聴くしかないのですから。
貴方の生きてきた "とき" は
そのときに何と答えますか?
そこには貴方にしかない人生が
映されるのでしょう。
こうして "対話" が重ねられていく。
私は今日もホスピスで導かれています。
(スピリチュアルケア・スタッフ 坂詰大輔)